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ストレスが喘息に及ぼす影響とは?

医学博士 三島 渉(横浜弘明寺呼吸器内科・内科クリニック理事長)
最終更新日 2025年01月06日

喘息の症状は、アレルゲンや気温差、風邪などが引き金となり、悪化することが知られています。

しかし実際には、これらに思い当たらない状況でも、咳や息苦しさが強くなることがあります。その背景に関わっている要因の一つが「ストレス」です。

強い緊張や不安、疲労が続く状態では、体の調整機能が乱れやすくなり、気道の過敏性が高まります。

この記事では、ストレスが喘息に影響を及ぼす仕組みを整理したうえで、日常生活で意識したい対処法や注意点について解説します。喘息を安定してコントロールするために、ぜひ参考にしてください。

1.ストレスとは何か

ストレスのしくみ
ストレスとは、外部からの刺激に対して心や体が緊張する状態のことです。

原因には、天候や騒音など環境的なもの、病気や睡眠不足など身体的なもの、不安や悩みなどの心理的なもの、さらに人間関係や仕事の忙しさといった社会的なものがあります。

さらに、結婚や昇進、旅行など、本来はうれしい出来事も、生活の変化に体が適応する過程で負担となることがあります。

人はストレスを受けると、それに対応するために自律神経やホルモンの働きが活発になります。

短期間であれば大きな問題はありませんが、強いストレスが続いたり回復の時間が不十分だったりすると、体の調整機能が乱れます。

【参考情報】『ストレスとは』こころの耳(厚生労働省)
https://kokoro.mhlw.go.jp/nowhow/nh001/

2. ストレスが喘息に影響する理由


ストレスで心や体が緊張した状態になると、自律神経や免疫の働きに変化が生じ、気道が過敏になったり炎症が強まったりすることがあります。

2-1. 自律神経と気道の関係

私たちの体は、交感神経と副交感神経という自律神経のバランスによって、呼吸や血流、免疫などを調整しています。

ストレスを受けると一時的に交感神経が優位になり、気道を広げる作用が働くことがあります。しかし、慢性的なストレスが続くと、自律神経のバランスが乱れやすくなり、さらにストレスホルモンの影響で気道の炎症や過敏性が高まることがあります。

その結果、喘息患者では、いつもなら気にならない程度の刺激でも気道が反応しやすくなり、咳や息苦しさが出やすくなるのです。

【参考情報】『The role of stress in asthma: insight from studies on the effect of acute and chronic stressors in models of airway inflammation』National Library of Medicine
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/17192557/

2-2. ストレスによる炎症反応の増強

ストレスを感じると、体はコルチゾールやアドレナリンなどのホルモンを分泌して対応します。

【参考情報】『Cortisol』Cleveland Clinic
https://my.clevelandclinic.org/health/articles/22187-cortisol

これらのホルモンは通常、炎症を抑える働きや気道の拡張を助ける作用がありますが、慢性的なストレスが続くと自律神経や免疫系のバランスが乱れ、炎症反応が過剰になりやすくなります。

喘息患者では、すでに気道に慢性的な炎症が存在するため、こうしたストレスによる免疫や神経系の変化が炎症の悪化につながり、咳や息苦しさ、発作のリスクを高めることがあります。

3. 喘息患者が抱えやすいストレス要因


喘息患者さんは、日常生活のストレスに加え、症状そのものや治療の管理も大きなストレスの原因になります。

3-1. 症状そのものによる心理的負担

喘息の患者さんは、発作がいつ起こるか分からない不安を抱えやすく、これが心理的なストレスとなることがあります。

急な咳や息苦しさに備えて常に注意を払う必要があるため、日常生活でも緊張感が続きます。

また、症状の悪化を避けるために外出や運動、趣味などを控えることもあり、生活の自由度が制限されることも精神的な負担となります。

3-2. 治療・生活管理に関するストレス

喘息のコントロールには、吸入薬の継続的な使用や正しい吸入方法の習慣化が欠かせません。しかし、毎日の薬の管理は思った以上に手間がかかり、吸入のタイミングや量が適切かどうかといった不安が、本人にとって大きな心理的負担となることがあります。

また、発作時の対応や症状のコントロールについて家族や職場の同僚など周囲の理解が得られない場合、日常生活で感じる不便や制限に対する不満が積み重なり、ストレスがさらに増すことも少なくありません。

こうした心理的負担は、喘息症状の悪化や生活の質の低下にもつながる可能性があるため、患者本人だけでなく、周囲の協力や理解も重要であることが指摘されています。

【参考情報】『気管支喘息患者の心理的・社会的問題と QOLの関係』J-Stage
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsrcr/9/2/9_160/_pdf/-char/en

4.大人の喘息とストレス

大人の喘息患者は、症状や治療のストレスに加え、大人ならではの責任や役割の重さも心理的負担となります。

4-1.日常生活のストレスがもたらす心身への影響

日常生活でのストレスは、喘息症状の悪化だけでなく、生活の質そのものにも影響を与えます。たとえば、仕事や家庭での責任が重くなると、気分が落ち込みやすくなったり、集中力が低下したりすることがあります。

こうした心理的な負担は、睡眠の質や食欲、体調全般にも影響を及ぼすため、喘息だけでなく心身全体の健康管理が重要になります。

そのため、ストレスサインに早く気づき、適切な休息や気分転換を取り入れることが、喘息の症状だけでなく日常生活全体の安定にもつながります。

◆「大人の喘息」についてくわしく>>

4-2.飲食によるストレス解消が喘息に与える影響

ストレスを感じたときに、つい食べ過ぎたり、甘いものや脂っこいものを摂ったりすることで気持ちを紛らわせる人も多いでしょう。加えて、アルコールを飲むことで一時的に気分を和らげようとする人もいます。

しかし、こうしたストレス対処法は、肥満や高血圧、糖尿病などの生活習慣病のリスクを高める可能性があります。特に飲酒は、体重増加だけでなく、アルコールによる気道炎症や免疫反応の変化を通じて、喘息症状の悪化につながることもあります。

◆「お酒で喘息は悪化する?症状が出る原因とお酒との付き合い方」>>

肥満体型の人は呼吸機能が低下しやすく、炎症や気道の過敏性も高まり、発作が起こりやすくなります。そのため、食べたり飲んだりして一時的に気分を紛らわすのではなく、体に負担をかけずにストレスを解消できる方法を取り入れることが、喘息管理にも有効です。

◆「喘息が肥満で発症・悪化する危険性」>>

5. ストレス対策は喘息治療の一部


喘息の症状を悪化させないためには、薬物治療の継続とともに、日常生活でのストレス管理が重要です。

この章では、吸入ステロイドの適切な使用を守ることの重要性と、自宅で取り入れられるストレス軽減策について解説します。

5-1. 吸入薬の習慣化で心理的負担を軽くする

以下の調査では、日常的に吸入薬を指示どおり使用できていない患者は約半数にのぼると報告されています。その要因として、不安や抑うつといった心理的な問題が関与している可能性が指摘されています。

【参考情報】『Asthma medication adherence, control, and psychological symptoms: a cross-sectional study』SPRINGER NATURE
https://link.springer.com/article/10.1186/s12890-024-02995-x

喘息管理の基本は、吸入ステロイドをはじめとする薬物治療を継続することです。しかし、ストレスが強い状況では、治療への意欲も低下し、吸入薬の使用が面倒に感じることもあるかもしれません。

吸入薬の使用は、日常の中で「考えずにできる行動」として習慣化しておくと、負担を感じにくくなります。

起床後や就寝前など、毎日必ず行う動作とセットにすることで、気分や意欲の変化に左右されにくくなり、ストレスがある状況でも治療を無理なく継続しやすくなります。

【参考情報】『Habit Strength, Medication Adherence, and Habit-Based Mobile Health Interventions Across Chronic Medical Conditions: Systematic Review』National Library of Medicine
https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC7218590/

5-2. 睡眠と生活リズムで心身を整える

十分な睡眠を確保し、毎日同じ時間に起床・就寝して生活リズムを整えることは、自律神経のバランスを保ち、気道の過敏な反応を和らげる助けになります。

就寝前にはスマホやパソコンの使用を控え、落ち着いた環境で過ごすだけでも、寝つきが良くなり、夜間の不安や息苦しさが軽減されることがあります。

5-3.呼吸法と軽い運動で緊張をほぐす

腹式呼吸のように、ゆっくり深く息を吐き吸う呼吸法を取り入れると、緊張した気道が少しずつ落ち着き、心身のリラックスにつながります。発作の前後や不安を感じたときに取り入れるだけでも効果を実感しやすいです。

【参考情報】『腹式呼吸をくりかえす』こころもメンテしよう~若者を支えるメンタルヘルスサイト(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/kokoro/youth/stress/self/self_03.html

また、ウォーキングやストレッチ、ヨガのように負担の少ない軽い運動を習慣化することで、体も心もほぐれ、気分が落ち着く時間を作れます。室内での簡単な筋トレやラジオ体操も、無理なく続けられる方法です。

◆「喘息の方におすすめのスポーツ」>>

5-4.趣味や情報管理で心理的負担を軽減する

日常の中で楽しめる時間を意識的に作ることも大切です。読書や音楽、手芸など没頭できる活動を取り入れることで、心の緊張をほぐし、心理的負担を軽減できます。

また、情報を追いすぎると不安が増すことがあるため、信頼できる情報源に絞って確認するのが安心です。

信頼できる家族や友人に症状や不安を話すことも心理的な支えとなります。また、必要に応じて医療従事者やカウンセラーに相談することで、自分一人で抱え込まずに対策を続けられます。

5-5.温かい飲み物でリラックス

温かい飲み物をゆっくり摂ることで、心身がリラックスしやすくなり、副交感神経が働きやすい状態になると考えられています。

その結果、心拍や呼吸が落ち着き、体全体の緊張が和らぐ可能性があります。

また、温かい飲み物を少しずつ飲む動作は、呼吸のペースを自然にゆっくりさせやすく、結果として深く落ち着いた呼吸を促す点もメリットです。

5-6.好きな音楽や音を聴く

リラックス効果の高いクラシック音楽やゆったりしたテンポの曲、鳥のさえずりや川のせせらぎなどの自然音は、自律神経を整える働きがあるとされています。

音楽を聴くことは、通勤・通学中や家事の合間など、日常の短い時間に取り入れやすく、継続することで心理的負担の軽減や喘息症状の安定にも役立つ方法です。

5-8.手先を使う作業で集中する

手芸や塗り絵、プラモデルなどの手先を使う作業は、集中することで気持ちが落ち着きやすくなり、結果として心身の緊張が和らぐことがあります。その過程で、呼吸や心拍が穏やかになる人もいます。

こうした活動は短時間でも取り入れやすく、完成の達成感が得られることで、自己効力感の向上にもつながります。

また、静かな時間に行うことで、日常の喧騒から離れ、心の余裕を取り戻すことができるため、心理的ストレスの軽減と喘息症状の安定の両方に役立つ方法としておすすめです。

6.おわりに

喘息の症状は、アレルギーや感染症などの要因だけでなく、ストレスによっても悪化することがあります。

ストレスは喘息を悪化させる要因のひとつとして理解し、過剰な負担をため込まないことが大切です。

ただし、症状のコントロールの基本は、吸入薬などの医学的治療であり、自己判断で中断したり軽視したりすることは避ける必要があります。

そのうえで、生活習慣の調整や心理的ストレスの軽減といった補助的な対策を組み合わせることで、心身の安定を保ちつつ、喘息症状をより良く管理することが可能になります。

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